ももだよりMomo dayori

2023/07/11

景井愛実さん

新しい就農のかたち

伊達市保原町の阿武隈川沿いに広がる桃畑。その中に、景井愛実さんの桃の圃場があります。景井さんが桃の栽培を始めたのは3年前で、高齢化や後継者不足で縮小することになった桃の圃場の一部、約30アールを借り受け果樹農家になりました。景井さんが入る前は新規就農の方が栽培を行っていましたが、別の圃場が育ってきたこともあり、現在の圃場を誰かにお願いしたいという時に手をあげたのが景井さんでした。

新規就農だと設備投資や作業のハードルが高いため、一部を委託するという形で、機械や消毒は元々の圃場のオーナーさんに協力してもらっています。桃の生産だけでなく、消費者の方にも桃作りに触れて欲しいという想いから、会員制体験農園として間口を広げ、農園をプラットフォームにしています。

農園をプラットフォームに

景井さんの想いに共感してくれた会員さんたちが、忙しい時は手伝いに来てくれたり、首都圏の販売会で出店してくれたりと、みずから声をかけてくれることも多いそう。さらには、直接買い付けに来てくれる直売所や、販売会で他の販売会へ話を繫げてくれるようになりました。
昔のように親戚や近所の人に手伝ってもらうのが難しくなっている現代。
「高齢になってからも続けてられて女性もできる農業だったら、持続可能性も高くなるんじゃないでしょうか。」
かつてのご近所付き合いのように、想いを同じくする人たちが集まり協力しながら新しい農業のかたちにチャレンジしています。

原点である畑へ

景井さんは伊達市の出身で、16年前に結婚し果樹農家に嫁ぎました。そこで出荷出来ず廃棄するしかない果物を目の当たりにして、「何とかしたい」と6次化に取り組み始めましたが、2011年に東日本大震災が発生。風評被害で農産物が売れない状況を受けプロモーションにも力を入れるため、発信や首都圏でのPR活動を始め、ワークショップ開催など活動の幅を広げていきました。

現在に至るまで、地域イベントの企画や商品化のプロデュースなども行ってきましたが、消費者と生産者の意識に乖離がある事に気づき、根本的解決には至らないと、今まで外に向けてしていた活動を、「一度畑に戻ろう」と決めたそうです。

農作物の価値を高めるために

消費者の農作物に対しての価値観を高めるためには、消費者の方にも畑に来てもらって、実際に作業をして本質を知ってもらうこと。
「果樹の世界観が好きなので共有したいという気持ちもあります。蕾から収穫できる桃になるのは、1000個だったら10個程度で、1つ1つが奇跡的に実り世界に一つだけ。色むらや形が悪い桃も、なぜそうなったか分かると見た目が綺麗な桃と同じだと分かります。価値が分かることで、「食べられることがありがたい」と幸せ度も上がり、自分ごとになって気のかかる場所になります。」

取り組みが広がる事をめざして

今後の目標は、もっと沢山の人に農園に来てもらうこと。関わる人が増えて結果的に大きくなれば、他の農園や桃以外の農産物にも取り組みが広がっていくのではないか、と景井さんは考えます。「持続可能性の高い農業」「生産者と消費者を繋げ農産物の価値を高めること」どちらも農業全体の大きな課題ですが、大きな情熱とともに農園には人が集まり、活動の輪が広がっています。
景井さんが代表をつとめる「Berry’s Garden」WEBサイトから会員制体験農園の活動の様子を見ることが出来ます。

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